大学生サポーターと事業所紹介
2024年夏のまきボラで大学生サポーターを務めさせていただきました、山形大学2年の平塚冬真です。
私が担当したまきボラは「やっぺす」さんを担当させていただきました。
『特定非営利活動法人 やっぺす』
震災後から、女性や子どもを始めとする多様な担い手に学びや活躍する機会を提供しています。
仮設 ・ 公営住宅でのコミュニティ形成支援、 女性支援等を実施。
現在は女性や地域の困難を抱える家庭の相談支援 ・ 子育て支援を中心に活動を展開しています。
WEBサイト▷https://www.yappesu.jp/
やっぺすでのまきボラについて
今回のやっぺすさんでのまきボラでは、8月の7日、8日、10日の三日間にわたり行われました。
一日目にやっぺすさんが運営しているやっぺすファームにおいて、栽培されていた野菜を収穫しました。
この時に収穫した野菜は三日目に行うやっぺす食堂というピザづくりのワークショップに用いられました。
二日目は三日目のイベントに向け、会場の設営や、当日に用いるピザづくりのレシピの作成を行っていました。
三日目は、ピザづくりを行いました。
地域の子どもたちと、そのご家族の方々が協力してピザを作る体験をしました。
多くのご家族に参加して頂き、イベントのサポートとしても参加者としても、高校生のみなさんがとても活躍されていました。
やっぺすのスタッフさんと高校生が話す様子
参加した高校生について
参加してくださった高校生の中には、イシノマキ・ファームさんでのまきボラにも参加されている方もいました。
その方は農作物がどのように町に還元されるかについて興味をもっていました。
今回参加してくださった全員がそういったことを知りたいという思いはあったのではないかと思います。
高校生は違う高校から、二人ずつ、計四人参加して頂きました。
この二組は高校も学年も違っていましたが、活動やコミュニケーションがボーダレスに行われていました。
それは、野菜の収穫や企画構想、ピザづくりを行う中で共通した目的に積極的に取り組む姿勢を全員有していたからだと考えています。
そういった関係性が自然と生まれていたことはとても喜ばしい事であると考えています。
参加した4人の高校生
まきボラ当日の様子について
【一日目】
一日目は最初に、農場の草取りを行い、その後、トマトやきゅうり、じゃがいもなどを収穫しました。
作業の中できゅうりが思ったより下に成ること、マリーゴールドの繁殖力に驚いていた様子を強く覚えています。
そして、そういった学びができたのはやはり、やっぺすさんのおかげだと考えています。
プログラムの内容だけでなく、高校生の到着よりも先に、草をある程度刈っていただいたことや、日陰となるテントを設置して頂いたこと、飲み物を頂いたことなど、やっぺすの皆様のバックアップがあってこそ成り立っていたと考えています。
やっぺすファームでの農園作業
【二日目】
二日目はやっぺすさんがどのような活動をしているのか、まきボラで学んでほしいことは何かなど、一日目では聞くことのできなかったことを改めて確認するところから始まりました。
やっぺすさんは石巻地域の女性を様々なかたちでサポートすることが主な活動であり、やっぺすファームは、今回行ったピザづくりのワークショップのほか、子ども食堂や生活に困窮している方への支援に用いられているそうです。高校生の活動レポートの中には、石巻市の現状を知らなかった、単に食糧支援と言っても様々なかかわり方もあると知った、とありました。
そういったお話を踏まえ、三日目に行うピザづくりに用いるレシピの作成を行っていました。
芸術の草冠もない私からすれば、皆さんのレシピづくりのセンスや素養は非常に優れたものであるなと、横からひたすら眺めていました。また、活動の中に今後も使う「やっぺす食堂」の看板づくりもあったのですが、正確な「や」を作るために定規を用いて完璧な位置、完璧なバランスの「や」を作図していました。
なるほど、これが進取独創かと驚きました。
そういった、普段の学習や、それまで培ってきた経験えをこういった創作の機会に生かすのは簡単ではないはずです。改めて高校生の煌めきを感じました。
↑高校生が作成した、三日目のピザづくりワークショップのメニュー表
↑高校生が書いたキャラクター(ワタノハさん)
【三日目】
KAGOMEさんの協賛のもと行われたピザづくり。
赤と青のエプロンに身を包み、事前準備に勤しむ高校生たち。
やっぺすの方々の指示のもと、てきぱきと動く皆さん。私はその写真を撮ること以外何もできませんでした。
その間考えていたのは、こういう会場の準備、レシピの準備をする事で、イベントの手触りというか輪郭が浮かび上がるようになるのだなということです。いかに大義名分がしっかりしていたとしても、それだけでは何にもなりません。だからこそ、その建付けを経験することは逆説的に大義を抱くことへつながるのだろうと考えながら活動の写真を撮っていました。
あわただしく準備をしていたら、いつのにか参加者の方々がいらっしゃいました。
そこからは各々が各々の仕事をはたしていました。
ある人はピザを作り、ある人は赤子様をお連れになられた方がピザを作っている間の面倒をみている。
子供たちとも積極的にかかわり、作り終わった後に提供するドリンクの準備をする、オーダーをとる。
そういった連携をちゃんとしていました。
誰に言われるでもなく、子供と目線を合わせて話を聞き、常に笑顔で活動していました。
高校生の皆さんは私よりよっぽどしっかりしていたのです。
そして、もろもろのピザづくりが終わった後、やっぺすの方、KAGOMEの方、そして高校生たちと同じテーブルを囲み、焼いたピザを食べたのでした。サポートする側のはずだったのに、逆にサポートされていたように思います。
三日間の中で、一つとして同じ仕事は無かったと思います。
農作業に、レシピ等のデザインにイベントの準備、進行、運営です。
かなりハードだったと思いますが常に積極的に行動されていた皆さんの姿に明るい石巻の未来を見ました。
今年の春にも同じことを言った気もしますが、あらゆることから学びを得ていく高校生たちのその姿こそが未来であると私は思います。
ピザづくりワークショップの様子
活動を通じて
今回活動させていただいた中で考えていたことはまきボラの行く末についてです。
まきボラの行く末というのは、高校生の皆さんのまきボラに参加した理由と、活動を通して感じていた問題点のようなものについての考えです。
今回参加していただいた方は、主に農業に興味があって、やっぺすのまきボラに参加したとありました。
しかしながら、やっぺす様の本質というのは、石巻における女性の活動支援であります。
高校生たちが活動するとなると、今回のような農作業や、食堂のサポートなどが関わることが可能なラインでありつつ、高校生にしかできないことがある領域であるという事は理解しているつもりです。
しかしながら、それを目的にさせてしまうのは違うと思うのです。
私はまきボラという活動はこれからの未来を創造する「未来の学び」を担うものだと考えています。
「未来の学び」とは2005年ごろに発売された美馬のゆり氏と山内祐平氏の著書である『「未来の学び」をデザインする 空間・活動・共同体』(東京大学出版会 2005)において登場する概念であり、まきボラというプロジェクトの根底をになうような考えであります。
学習とは個人的な活動ではなく、まきボラのようなコミュニティの中に参画し、その中で対話や活動を行う事であると言います。
まさにまきボラとは、事業所様の中で活動を行い、高校生たちが楽しみ、または葛藤し、大きな学びへとつなげていく未来の学習の形であると言えます。
だからこそ、今後のまきボラに必要なのは、高校生がどのような活動を行いたいかを明確にすることだと思います。
どのような活動をするのかをある程度認識したうえで、実際に活動し、様々なことを学ぶことが必要であると考えます。その際に、想定していなかった楽しさや葛藤などを経験するでしょう。
それが大きな学びへとつながると考えています。そして、私のような大学生サポーターもさらに多くのことを学び、よりよい伴走者としてサポートするためには、基本的な考えである「未来の学び」がどのように生まれるのかを明確に理解する必要があります。
高校生と比較的近い目線で関わることができる存在かつ、学習者としてのロールモデル的存在にもなり、まきボラ側の人間として事業所の方々をも高校生の学びの中に巻き込むことができる存在、それが大学生であると考えています。
まきボラには高校生と事業所の方々との関係性、大学生サポーターの役割などまだまだ課題は残されていると考えています。それでも今まで続けてきたことは間違いではないと思います。
このまきボラという活動は受け入れてくださる事業所の方々がいて、それに参加してくださる高校生の方々もいて初めて成り立つものです。そして、こういった学びが石巻の「未来」をつくるのだと私は信じています。
私は何もできませんが、未来ある高校生たちのためにどうか末永くご支援賜りますようお願い申し上げます。